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「526」受ける仕事、受けない仕事

ここ最近、会社のHPからの問い合わせが数多く来ていた。 あまりにも多くて対応仕切れなかく、ある程度間口を狭めることにした。

というのも、まず見積もりを出してほしい、という人が多かったからだ。 見積もりはいくらだって出せる。というか見積もりを出す手間を省く為、ある程度の基準となる料金表を載せているんだけど、やっぱり服を作る時って、素材やデザインや作る数量、納期によって毎回違い、決まってる金額を出すのがなかなか難しい。 だからあくまでも基準としての料金表しか作れないから、それを載せている。

確かにそれだけじゃ物足りないってことで、見積もりの依頼が来るんだけど、一番たちの悪いのが、他者との相見積もりだ。理由と説明は省くがぼくはこの行為が本当に嫌いだ。シンプルに考えて、じゃあその仕事はどこの会社だって良いってことだろ?金額によってどちらで作るかを決めてるようなものを、ぼくらがやる必要はない。 その仕事は他社でもできる。

だからどんな仕事でも受注をすると思われたら大間違いで、さらにそもそも基本的には既存で長くお付き合いしている大事な大事な取引先さんがある。ただ工場としてはキャパを埋めてナンボなのは確かなことなので、既存のお客さんだけではキャパに満たない場合だって年間通せばどこかで出てくるし、万が一既存のお客さんとの取引が無くなったりした時のリスクも考えて、新しいお客さんとの取引はもちろん常に大事にしている。それが前提での話だ。

こうした取り組み姿勢をぼくは持っているから、もちろん少ロットの大変で正直利益率が低い仕事も受けるけど、でもそういうお客さんはちゃんとした製品を作りたくて良い工場を探していたりする。良い工場とはきっと、お互いに同じ方向を向ける、熱量を共有できる工場だとぼくは思う。それにはもちろん最初の段階でお客さんの熱量はどれくらいなのかをこちらも聞き出してちゃんと話合ってから行なっている。それで初めて、じゃあ1アイテムずつ、しっかりとじっくりと試作サンプルも作ってまずはウチの技術も見てもらい、それでお互い納得出来たのなら、進めてみましょう。ということでお仕事をさせて貰っている。この流れをぼくは大事にしている。

にも関わらず最近あった事例を一つ。 とあるクラウドファンディングで販売する商品を企画していて、国内で作れる工場を探している。という問い合わせがあった。その会社のクラウドファンディングの過去の内容を見てみると、クオリティの高い工場でいわゆる品質の良いものを作っているような感じが見受けれた。何やらクラウドファンディングサイトの中で賞を取ってたりしてたけど、まず第一にそれはこちらとしては関係ない。

それで初めはカットソーを作りたいと言っていて、ウチの会社はカットソーに特化した工場じゃなく、カットソーも作れるし、シャツやスカートやジャケットとかの布帛アイテムも作れるオールマイティな工場です。なのでカットソーに特化した工場の方がクオリティが高く尚且つウチよりも安くできるから別を探してみてはどうですか。ということを伝えた。そうしたら、だったらジャケットは作れないか?と。

勿論作れますよ。どんなジャケット? メッシュ素材で作りたいんです。どんなイメージか画像を送ってもらった。メッシュ素材はもちろん集めれるし縫製できるけど、だけど、そもそもね、そもそも論として、なんの為のメッシュ素材なのかが説明がない。すなわち、ただメッシュ素材のジャケットを企画していて納期はいつでって言われても、うちは確かになんでも作ろうと思えば作れるけど、、、でも決定的に言いたいのは、どんなものでもなんでも構わずやります!なんでも仕事ください!とは一切言っていない。

もう一つそもそも論としてそこに付け加えたいのが、そのジャケットは「ウチの工場じゃないと出来ないのか?」ということ。いや、多分他の工場でもどこでもできると思う。メッシュ素材のジャケットなんて、日本全国本気で探せばできる工場なんてまだ沢山ある。つまり”ウチの工場がやる理由”というのが全く見出せない。

つまり、発注してお金払えば物はできるという「メーカーが上で工場は下請けだから下」という意識が、相手に深く染み付いているということだ。きっとそういうことも考えたことないだろうなって様子だったけど。

でも、ぼくやぼくの父の会社ではこれまで、そういう意識の会社とのやりとりで非常に苦労してきた事実がある。なんども潰されかけてるし、実際に潰れたことがある。分かりやすく言えば大手の仕事や商社の仕事なんて結構そういうことが多かった。きっとアパレル業界だけじゃないとは思うけど、仕事の内容や技術じゃなく、上から言われた通りに全てをこなすのが工場なのか?なぜ対等じゃないのか?工場や下請けには人権や尊厳はないのか?こんな相手に今まで散々粗末に扱われてきたことが、ぼくの身には傷として染み付いている。

だからこそ、今回あったその相手の仕事はハッキリとお断りさせて頂きますと伝えた。ここまで細かく説明してないからきっと分かりっこないけど、あまりにも浅はかすぎる。どうしてもこれが作りたいという熱意も全くない。ただなんとなく日本国内の工場で作ったという代名詞と、こだわった風な感じを出せれば十分なんだろうなとヒシヒシと感じた。だから断った。

仕事って、仕える(つかえる)事と書く。つまり支えになって初めて成立すると思う。 だからこそ、支えになりたいと思える内容じゃないと、仕事じゃない。 仕事を選ぶなって人もいるが、ぼくは違って仕事だからこそ選べよと思う。

選ぶというよりお互いがお互いを見定めると言った方が正しいかな。そしてその仕事をしっかりこなして、信頼してもらう。せっかく仕事を受注するなら、次もまたお願いしたいと思ってもらいたい。

ウチの会社だからお願いしたいと言ってもらえることが大分増えてきて、お陰様でずっと繁忙期が続いている。そんな嬉しい依頼を断って、事例で話たような仕事をしろってか?なんでも仕事を受けると思ったら大間違いだ。

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