top of page

「53」

GW中、いつもいくカフェでランチをしていた。隣の席には50代と見られる奥様とその親と思われる70代のおばさまがいた。話を盗み聞きしていると、このカフェにくるのはずいぶん久しぶりだったようだった。

そこはカジュアルフレンチのカフェで、ランチでも前菜、メイン、デザートといった感じで提供される。親子はぼくが前菜を食べている時に すでにメイン料理を食べ終わっていて、いよいよデザートだという所だった。久しぶりに来たこともあってか話が盛り上がっていて、おばさまがカバンからなにやらものを出して、娘?に見せて説明していた。その時、帽子がカバンからフッと床に落ちたように見えた。ぼくは本を読んでいながら、横目でその感じがなんとなくわかったけど、話も盛り上がっていたしすぐに注意するのはやめておいた。親子は気づかずにデザートを済まし、一息ついてから会計のために立ち上がった。改めてしっかり床を見てみたら、やっぱり帽子が落ちていたので、声をかけた。「帽子、落ちてますよ。」

奥様が「ありがとうございます」と上品で素敵な笑顔でいってくれた。続けてぼくの読んでる本を指差し、「私も、その本読みましたよ。とっても面白い本ですよね」と。少しその本の話で盛り上がった。

なんだかとてもいい休日だとしみじみ思える日だった。同じ本を読んだことがある人が、世代も性別も違いながら、同じカフェに来ている。当事者ながらなんだかあれはとてもいい光景だった。親子は会計を済まし、店を出る時に、おばさまがまたこちらに来て軽く会釈をして出て行った。

ぼくはまた本を読み始めた。これは特になんでもないただ見ず知らずの人と”話すキッカケ”になっただけの話だけど、非常に素敵な一時だった。

関連記事

すべて表示

づけづけと遠慮がない。

ウチの会社に来ている中国人実習生の一人が、今年の9月に3年の期間を終えて帰ることになる。みんな日本に来て数百万も貯めて帰る間際に母国に送金をする。とても感心するし立派だ。 というわけで送金したいという一人を連れて名古屋にある中国銀行の支店へと行った。説明はいらないと思うが中...

Sundayから始まる感覚

海外の習慣?文化?感覚?は、日本の感覚とは違うらしい。 と、ずいぶん前に何かで目にした。(海外と言ってもどこかすら忘れた) それは何かっていうと、日曜日が週の始まりだということ。 英語の曜日を覚える歌でも必ずSunday Monday...

Comments


bottom of page