今話題のグリーンブックを観に行ってきた。 終わってからも余韻に浸れるような。心から観てよかったと思える良い時間を味わう事ができた。評論するわけではなく、せっかくだから、感想を書いておこうと思って。
※ネタバレあるのでごめんあそばせ※
人種差別を受けて、それでも耐えて耐えて耐え続け気丈に振る舞うドンシャーリーの姿と、何にも世間を知らないガサツでドアホなトニー。そんな二人の成長物語でもあるロードムービーだ。
笑ってしまったのは、ケンタッキー州に寄った時、ケンタッキーフライドチキンを箱買いして、車内でガツガツほうばるトニーを横目に、チキンを手で食べるなんて出来ないドンシャーリーに、トニーは無理やり手で食べさせる。はじめは拒否していたものの断りきれず手で食べてみたら、美味い事に気づくドン。食べ終わったチキンの骨は車の外に捨てればいいと言ってブン投げるトニーとそれを真似するドン。食を通して二人の距離はグッと縮まった。その流れでジュースのゴミも一緒に捨てるトニー。そこはしっかり車をバックさせて拾わせるドン。なんとも愉快なシーンで思わず声を出して笑った。それまでにやたらとトニーがいろんな物をガツガツ食べるシーンがあるから余計ケンタッキーが効いて来るんだろうな。あと、トニーはタバコ吸ってないシーンがないくらい、タバコばっか吸ってたな。やつはきっと早死にするだろうな。。思い出してもニヤッとする。
こうやってガサツのトニーも、はじめはただの無知からか、黒人差別をしていた。家のエアコンの修理にきた黒人二人に、コップにドリンクを入れて出す奥さん。そのコップを後からゴミ箱に捨てるトニー。だけど彼はドンとの旅の中で、世の中を知っていき、黒人を理解し初めていく。白人のトニーよりも教養や知識があるドンの手を借りて、奥さんに宛てた手紙もどんどんうまくなっていき、みるみるうちに様々な事を学んでいくトニー。この純粋でまっすぐなトニーの姿勢は、非常にかっこいいと思うのだ。
ドンも、最後のピアノの演奏会の会場で、招待されたにもかかわらず楽屋は物置で、さらには演奏前の食事も、黒人だからこの会場のレストランでは食事は出来ないと言われる。それは”決まり”だからと。60年代の当時、南部での黒人の扱いは基本的に奴隷。今回の演奏会の旅にあえてその南部を選んだドンの勇気。耐えて耐えて耐え続ける彼の精神力。「才能だけじゃどうにもならない」と言う言葉が劇中に話されていたけど、それでも尚、立ち向かうその姿勢。人種を超えた、根本的な生命力の強さを感じた。カッコイイという言葉じゃ片付けられないものがある。
他にも書きたい事は山ほどあるけどここまでとして。
今の世の中、トニーのように、これほど純粋な人はいるんだろうか。虚勢を張ったり、知ったかぶったりして、そうやって自分を大きく見せようとしている人ばっかりな気がする。トニーのように何事にも誠実でいられる人って少ないんじゃないかな。自分も含め、そうしたある意味広い心で、損得勘定なしでなんでも受け入れる、ピュアネスを持ち合わせていなきゃいけないと思わされるのだ。
それに周りから何を言われようが、どんな仕打ちを浴びようがドンのように、自分は間違っていないからとドンっと構えて、しっかりと自分の足で歩いて行く勇気を持った人って、今の世の中どれほどいるだろうか。決してブレない強い意思を持って、最後までやり遂げる志を持って、ぼくも立ち向かわないといけないと思わされる次第だった。
とても有意義な時間を過ごせた2時間だった。良い物ってこういう物を言うんだな。
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