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「334」レコードプレーヤーとものづくりと

ターンテーブルを老夫婦から譲り受け、同時にアンプ、スピーカーも一緒にもらった。もらったときは、不燃物として処分するつもりだったらしく、倉庫の奥にしまってあったのを雨が当たらないようにしてはあったものの、外に置いていてホコリや砂が沢山ついていて、さすがにもうどうにもならないだろうなぁ、でも動いたら嬉しいなぁなんて思いながら、毎日ちょっとずつ綺麗に磨いていった。

ターンテーブルは1987年くらいのもので、老夫婦の娘さん(僕より随分年上の50代くらいの人)が当時ダンスをしていた時に使っていたらしい。HIPHOPやレゲエの古いステッカーが貼ってあって、ちょうど日本でも流行り始めた頃だと思うし、年代を感じる。若干レコード針も曲がっていて、絶対使い物にならなさそうな雰囲気だった。 それでも綺麗に磨いて、丁寧にホコリを取り、使い方も一切わからないからネットで調べ、それぞれの部品の意味やなんかを見てちょっとずつ理解した。 いざ電源プラグをさしてスイッチを入れたら、しっかりとランプが光りだした! そしてテーブルも回り始めた。本当に嬉しかった。

アンプもスピーカーも同じくホコリまみれで汚い状態。こっちの方が絶対つかない雰囲気を出してたけど、でももしかしたらって可能性を信じて部品を外しながらちょっとずつ磨いて、アンプのPHONOの挿入口にターンテーブルのPHONOのラインをさして、アンプからスピーカーへ動線を繋げ、見よう見まね、訳も分からず適当だったけど、なんとか準備完了した。

テスト用にと、小泉今日子のLPをもらっていたから、テーブルに設置していざスタート!針を落とす場所もどこかイマイチわからないから適当に。バチバチと音を立て始めたスピーカー。やっぱりダメかって思ったその瞬間、小泉今日子が歌い出した! そのときの僕には、小泉今日子の声は天使の歌声に聞こえた!

年代を感じさせる音色、危なっかしいくらい敏感なレコード針。スピーカーの振動。

1曲を聞くまでに割いた日数は約2週間。

現代思考の真逆をいくこの行為が、いかに新鮮で、いかに物理的で、いかに価値のあるものか。

60、70、80年代を過ごしてきた人たちが、レコードショップでジャケ買いしたり、友達からレコードを借りたり、そうやって面倒な一手間をかけてからようやく聴いた曲ってものすごいテンション上がっただろうな。その気分が、ちょっとだけ分かった気がする。

もう一つは、昔の製品の物持ちの良さ!ただわからず磨いたなのに、30年位のときを経てもまだしっかり使えるという頑丈な作り。アンプなんかにもカバーには鉄が使われていて、スピーカーの木材も全然劣化してない。 アンプもスピーカーもターンテーブルも、一つ一つがものすごい重量で、簡単に持ち運びなんてできない、決して便利とは言えないけど、充実したモノづくりを感じる。

次の休みの日は、村上龍の69を読みながら、マイルスデイビスとかのジャズを聴き、ナチュラルワインを飲みながら思いっきり満たされたものづくりに囲まれ、溢れる1日を過ごそう。

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